銀輪の覇者

銀輪の覇者 上 (ハヤカワ文庫 JA サ 8-1)

銀輪の覇者 上 (ハヤカワ文庫 JA サ 8-1)

銀輪の覇者 下 (ハヤカワ文庫 JA サ 8-2)

銀輪の覇者 下 (ハヤカワ文庫 JA サ 8-2)

自転車ロードレースものということで買ってみたら2005年「このミス」ベスト5らしい。自転車ロードレースというだけでも微妙なのに、戦前という微妙な時代設定も加わって相当にマニアックな感じかと思いきや、読んでみるとそうした道具立てはあまり重要でなく、スポーツの楽しさ、素晴らしさを高らかに歌い上げる内容だった。
もちろん自転車レースについては何も言わないわけにはいかない。競技車ではなく実用車による日本全国横断レースが舞台であり、そのワケがまた戦前という時代設定と関わっており、うまいことつくってある。レースの描写は明らかに自転車レースファンによる専門的かつ熱狂的なもので、読んでる間は実用車という設定を忘れてしまうほど。物語が進むにつれ、ポツポツと明らかになる各登場人物の事情、終盤にかけて動く展開、混乱きわまる中で結末へとなだれ込んでいく…物語の進行それ自体がロードレースそのもの。上下巻ものだったけど一気に読んじゃいました的な。
ちなみに自転車ロードレースは見知らぬ人との助け合いあり、駆け引きあり、チームメイトとの団結あり、献身あり等々、ドラマに仕立てやすい。映画化どうでしょう。