今年のCD2009

CDというかバンド。今年はRUSHブームが来た。去年DreamTheaterブームが来たので、そこから遡ってRUSHというのはベタな流れではある。遡るといってもRUSHは現役続行中のまさに妖怪バンド。しかし今年私が聴きまくったのは基本的に80年代のものばかり。70年代の思いっきりプログレといったものでもなく、90年代以降のグランジの影響を受けて渋くなったものでもない。ある意味黄金期のRUSH。週2回の呉までの通勤はRUSHを聴きながらディックを読むというのが定着した。
80年代の、といってもまだ全部聴いたわけではないのだが、キャッチーなメロディに皮肉っぽい歌詞、そしてバカテクということでどれも隙がない。飽きない。
ところで、人前で話をするとき、一番やってはいけないのは相手がわからないように話してしまう(話さざるを得ない)ことである。それは何より準備不足、ひいては端的に能力不足なのである。まあまあなのは、相手が「あ〜それわかります」みたいな感じになればよい。これが最低の合格基準。最も望ましいのは相手の世界観を変えてしまうくらいの話ができることで、聞き手の目がらんらんとして「それマジっすかぁぁぁ」みたいな顔になっていれば、心の中でカカ風に両手を挙げ人差指で天を指してガッツポーズをしても許されるであろう。そのためには難しい話を簡単にするのがよいのだが、これが難しい。ジダンが凄かったのは難しいプレイを簡単にやっていたからである。相当な地力がなければできない業なのである。
80年代のRUSHは、思うに、難しいことを分かりやすい形で世に提示し続けた時期と言ってよいのではないか。難解さの向こう側に見えるものもあるが、粘り強くそこにたどり着ける人はそう多くない。ボクらね、ちょっとわかりにくいことやってきましたけどね、こんなんもできるんですよ。やりゃあできるんですよ。で、いいでしょ?という感じの80年代RUSH。これだけ詰まった曲を3人でやりきってしまうことはただただ驚きである。しかも彼らはライブでできないことはやらないという主義である。それを支えるのはバカテクなわけだが、この二つの事実だけでも私のバンド観を変えてしまうに十分だった。5人組のバンドって何なんだろう、ライブで再現できないギターソロを無理して弾くなよ、等々
ちなみに2枚ほどトリビュートアルバムにも手を出したが、多くのトリビュートアルバムが持つ(ただのカバーじゃん的な)悪癖を備えたものでしかなかった。しかしその中でデヴィン・タウンゼントという懐かしい人に再会できたのはラッキーな偶然だった。多才な彼らしくノンジャンルな感じで活動していたみたい。彼が歌うNaturalScienceは戦慄と優しさが同居した彼らしい一曲だった。そのための2000円は明らかに不当だとは思うが。
MOVING PICTURESSignalsPower Windowsワーキング・マン~ラッシュ・ト