真夏の夜の悪夢、そして勝利

先日、深夜に部屋でのんびりしていると何やら蠢く物体が。目の錯覚ではない。またアレが本気出す季節がやってきた。
アレは本棚の窪みやら部屋の隅やらとにかく打撃系の攻撃を無効化できるポジショニングを保ちながら移動する。なかなかインテリジェントじゃないか。これが考えて走るというやつか。
対する私は平穏な日々にうつつを抜かして全くの準備不足だった。手には古い資料の束。それが唯一の装備。これでは攻撃の選択肢は限られる。
長いにらみ合いの後、ようやくアレが隙を見せた。柱のへりで停止したのだ。完全な一撃を加えるには多少難しいが、チャンスはここしかない。
中腰の体勢から放った一撃は…ミス!クリーンヒットを逃れたアレは素早く視界から消えた。
ああ、なんということだ。深夜の安息の時間を返せ。
その日はアレが見せたまさかのジェットストリームアタックにうなされながら寝苦しい夜を過ごした。
「と、飛んだあ〜!」(←寝言)。
次の日、前日の悪夢のような夜の出来事を猛省し、もう二度と過ちは繰り返しませんとばかりに第一戦闘配備を整えるためにドラッグストアへ。
ゴキブリホイホイはだめだ。あれは飾りですよ、飾り。ここはやはりホウ酸ダンゴの地雷原を展開するのがセオリー。そして万一の白兵戦に備えて火器も必要だ。ゴキジェットとゴキジェットプロで悩んだが、医薬品指定の上位機種であるプロを選択。そう、私はプロの仕事を求めている。心の底から。こうして準備は整った。ダンゴで守りを固め、ジェットで撃沈する。完璧な構想じゃないか。
しかしその晩はアレは現れなかった。犯人は必ず犯行現場に戻ってくる。コナンでやってた。船越英一郎もそう言ってたじゃないか。おかしい。
そして今日、二度目のゴングが鳴った。風呂に入ろうと脱衣所で全裸になった時点で、よりによってそんなときに、ドアヒンジ周辺で待機しているアレを発見。しまった。予想外の展開。
私の部屋は2階で、風呂場は1階。主戦場は2階だと思っていた。戦局は刻々と変化していたのだ。全裸になってる場合じゃない。急いで再び戦闘服を着て先日配備された火器を手にとる。敵はお風呂にあり。
風呂場に戻ってもアレはまだじっとしていた。いい子だ。主砲をしっかりターゲットに照準を合わせ、いざトリガー。ドッゴーン(←イメージ)。
初弾命中!敵機は明らかに混乱している。
ドアから床へ移動したところを狙って追撃、再び命中。
最新の化学兵器の威力はまさしくプロの名にふさわしい。敵機のHPは今頃オレンジ色で表示されているはずだ。
排水口のあたりでジタバタしているところに向かって最後の一撃。これでアレのライフは完全に一ケタ台に。まだ息の根はあるが何もできないだろう。
チラシを使ってトイレに運び、往年のベンキマンよろしく悪夢とともにウォッシュアウト。こうしてアレは海の藻屑と消える(予定)。ワレ、敵機一機ヲ撃墜セリ。完全勝利だ。
思えば数日前の先制攻撃は全くの想定外だった。しかしそこから態勢を立て直し、完璧な計画に基づいた上での完璧な勝利。
平和とはボケて弛緩しきった状態ではありえない。何かが起きれば勇気を持って対処し、速やかに平和を回復しなければならない。そしてその後も緊張感を持って警戒と準備を続けなければならない。
そうした不断の努力がギリギリのところで平和を実現しているのであり、それはいつでも綱渡りなのだ。
恒久の平和は厳密な意味では決して訪れない、だからこそ求めなければならないのである。

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