扉をたたく人

映画「扉をたたく人」。最初タイトルを「肩をたたく人」と勘違いしてた。それじゃあ子供の小遣い稼ぎか窓際族のリストラ物語じゃないか。
妻を亡くしてふさぎこみがちな大学教授が、ひょんなことからいろんな人たちに出会い、その中で心を開いていくという話。というのはとてもきれいな売り文句で、アメリカの移民問題、とりわけ9・11後のそれが描かれる。出会う人たちというのはアフリカ系の移民であり、9・11以前は手続きなどを適当にやっていてもお咎めなしだったのに、9・11後には昔の手続きの不備から不法入国者とされ(法的手続きとしては正しいのだが)、強制送還されてしまう。大学教授の出会いはそれによって引き裂かれてしまう。元気のなかった教授はラストで元気になるのだが、それは拘置所の受付係に対する怒りの叫びという形で描かれる。移民の国アメリカで移民問題が進行するというのは、アメリカ人とは何なのかを問う問題でもある。ピアノはモノにならなかった教授は、若いアフリカ系移民に教えられたジャンベ(太鼓)にハマり、その音とリズムが物語に花を添えている。日本でも少し前にカルデロン問題があったわけで、移民問題は確実にリアリティを増しつつある。文化摩擦のことは置いといて、手続きだけはちゃんとしとけばいいのに、と思いそうなものだが、されど手続き。日本人でさえ年金の手続きすら満足にできないのだから。ええ、まじでいまだによくわからない。現代はthe visitorなので、このタイトルの方が移民問題を強く想起させそう。