江戸小紋

講演会を聞きにいち文さんへ。テーマは江戸小紋
奉公人さんが誘ってくれたので、まったく縁のない世界だし
いっちょ覗いてみるか、ということで。
ググる程度の軽い予習は一応していったが、そんなものは何の役にも立たなかった。
気楽に行ったのだが、話し手は冗談抜きの無形文化財クラス。
聞き手は成り行き上、私とグラフィックデザインなどをしている友人の二人のみ。
しかも二人とも若い(30代前半)男。
要は着物を購入するわけではないのでプロモーションにならない。
にも関わらず非常にフランクな方で、素人にもわかりやすく、
様々な観点から説明してくださった。


江戸時代、武士が正装として紋付袴を着ていたわけだが、
その生地に実は小さな紋が入っている。それが小紋
小紋という文化自体は1200年の歴史を持っているらしいのだが、
家康が全国の大名それぞれに固有の小紋を定め、
権力の中枢に近い大名ほど紋が細かい。
また藩内の武士の序列によっても、トップに近ければ近いほど紋は細かくなる。
それゆえミーティングなどで武士が顔を合わせたとき、
どんなに世間知らずでも(そんなのいないだろうけど)紋を見れば
どちらが頭を下げるべきなのか一目瞭然なのだとのこと。
考証がきちんとしているNHK大河ドラマでは、これが見事に再現されているとのこと。
水戸黄門じゃダメらしい。


そしてまたその細かい小紋に関する技術が凄まじい。
原則的には親子間で伝承していく技術らしいのだが、それは要するに、
幼少の頃から英才教育を施さなければ体得できないほど
要求されるスキルが高いということ。
型紙や生地の現物(おそらく博物館レベル)を至近距離で拝ませてもらったが、
繊細などというありきたりな形容詞ではまったく歯が立たない、
ナノレベル(比喩です)の手作業が実現した紋様はまさに神業。


他にもいろいろと興味深い話を聞かせてもらい、
畏怖すべき伝統に触れることができた。
歴史ってのはまったく恐ろしい。江戸小紋ヤバすぎ。職人の執念コワすぎ。