Gのいない夏…そして

部屋の片隅で物音がする。あれは風の音じゃない…

この夏、私は過去最高額の投資により過去最大規模のG対策を施した。要所要所にホウ酸ダンゴを設置してGを追い出す。そして通気口や換気扇といった外部からの侵入経路に「網戸に虫こない」を散布。追い出して入れないという完璧な構想。それでもなお万が一の侵入を許した場合には、新聞紙などによる白兵戦に委ねられるわけだが、相手方が地形を利用して打撃系攻撃を無効化した場合に備えてゴキジェットプロを配備するのは昨年と同様。ただのゴキジェットではない。プロである。
この史上最大の作戦が奏功し、この夏はまことに平和であった。まさか夏が終わるまでただの一匹も現れないとは思わなかった。ホウ酸+虫こないの効果は歴然。
そして夏が終わった。これでGとの戦いもひと段落。来年までシーズンオフと思っていた。

壁に張り付くくろがねの物体。プロのトリガーを引く。ファイヤアアアアァァァァ!!!購入して一年が過ぎた飛び道具は鮮度を失ったのか、効き目が弱い。あまり噴射すると足元で寝ている猫の八兵衛さんの健康被害は免れない。三度の噴射を経てGはあろうことか部屋の隅、本棚が密集する壁際の隙間に飛び込んでいった。これではもはや手が出ない。部屋の隅で絶命している可能性もあるが、それが確認できないのは非常にやるせない。なんだろうこの無力感。部屋に残されたのは鼻にツンとくるプロの刺激臭のみ。秋の夜長の悪夢。