カント主義者ねぇ

理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書)

理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書)

複数の登場人物による対話形式で進んでいく「合理性の限界」に関する話。論理についてここまで噛み砕いて書いてある本は今まで見たことがない。入門者にとって良書。
登場人物の一人として「カント主義者」なる人が出てくるのだが、その人の描き方が個人的には面白かった。理性に関して議論するならカントは絶対に外せない。私はカント主義者ではないし、ここで描かれているようなカント主義者は大嫌いだが、やっぱりそう思う。
で、やっぱりこのカント主義者は「まずカントだろう!カントについて議論しないなんて君たちは何を考えているんだ!」みたいなことを言うんだが…こういう人が実際にいるから困る。あとヘーゲリアンも。日本では高名な某教授が、アメリカで「ヘーゲリアンです」と言うとちょっと白い目で見られたとおっしゃっていた。
大体Kantianの訳が「カント主義者」なのが事の次第をよく説明している。「カント研究者」ではなくて「カント主義者」。日本に哲学が輸入されたあと、ずっとドイツ哲学が本流であり、そのまた本流という自負でもあるのだろう。
もちろんカントとヘーゲルは実際すごい。掛け値なしに哲学史上にそびえたつ巨人でありガチのツートップ。でもそうした「主義者」たちの振る舞いに不愉快な思いをさせられることはあるし、著者もそうした経験があるのだろう。もちろん大部分のカント研究者、ヘーゲル研究者は立派な人たちなので、余計に残念。ということで本を読みながらその描き方は楽しませてもらった。
でも最後までカントの純粋理性批判を説明しなかったのはやっぱりまずかったんじゃないか。

デス・マグネティック~ストロング・エディション

デス・マグネティック~ストロング・エディション

いわゆるブラックアルバム以降、メタルの新しい方向性を模索してきたメタリカ。そのおかげで古いファンは正直失望し続けてきた。もっとザクザクやってくれよ!テンポがおせーんだよ!みたいな。で、この新譜はあちこちで「初期を思わせるハードさ」みたいなことが言われている。私は「古いファン」なのでかなり期待している。iTunes Storeで視聴した1曲("My Apocalypse")はなかなかよさそうだったし。
これを機に今までのアルバムがSHM-CDなる高音質CDで発売されるらしい。こういう商売は正直…嬉しいじゃないかッ!とりあえず『キレモール』『ジャスティス』『マスター』あたりは買っとこうかな。