サッカーの詩学と政治学

サッカーの詩学と政治学

サッカーの詩学と政治学

サッカーでカルスタという、その筋の人には完璧なテーマの書。論文集の形式で、歴史、人種、ジェンダーなどのテーマがサッカーを通じて論じられる。最初の論文はなんというか、難しく書きすぎてよくわからなかった。こうした分野、テーマだから箔をつけたいのかもしれないが、難しく書くのは評価を下げるだけなのであって、むしろサッカーという身近なテーマだからこそ平易な文章を心がけてほしい。敷居を高くしてどうするんだ。他の論文はどれも平易ながら読み応えのあるものが勢ぞろい。植民地時代の負の遺産がそのまま残っているヨーロッパとアフリカの関係。サッカー報道に見られる恣意性。サポーターに見られる男性性など。
例えばドイツ、韓国などは日本では「メンタルが強い」という形でしか伝えられない。ドイツサッカーは「ゲルマン魂」ばっかりで、現代的なサッカーをしているのに正当な評価や解説が加えられないのは残念。韓国も同様。オランダサッカーとのつながりが強い戦術を採用しているのだから、ヨーロッパとのつながりのなかで解説してくれればもっとアジア(それどころか日本‐朝鮮半島‐中国東部という「東アジア」)の枠から飛び出せるのに。もちろんこのあたりは歴史問題が絡んでくるのは避けられないし、それが面白いところではある。でもやっぱり、テレビには期待しないが、いい加減韓国サッカーを「闘争心」でくくるのはやめてもいいんじゃないか。