ポピュラー音楽と資本主義

ポピュラー音楽と資本主義

ポピュラー音楽と資本主義

資本主義社会において音楽がどのように消費され、
自由な創造活動とみなされている音楽がいかに資本主義という枠組みの中に
組み込まれているか、あるいは逆に、レコード会社はもちろん
アーティスト自身がそれをどのように利用し戦略を立ててきたか、
しっかりした理論と豊富な知識、それに加えて
音楽への少しの愛情(これが多すぎるとただのレビューになってしまう)が
ほどよくバランスされた書。
この手の本は愛情が多すぎて偏っていることが多いが、
著者自身がそれに非常に注意しながら(学者としては当然の配慮ではあるが)
様々な切り口で音楽を考察している。
ジャズからヒップホップまで、黒人音楽をいかに白人が搾取してきたか、
しかもそれが文化面だけでなく、レコード会社へのアクセシビリティから
経済的にも、つまり二重に搾取されてきたとの指摘だとか、
建前上は肌の色で差別されない資本主義へのコミットメントを強めることで
黒人たちが人種差別に対抗してきた一つのあらわれが、
金のネックレスをして高級車を乗り回すラッパーに象徴されているだとかの
指摘が非常におもしろい。
確かに、なんであんなにラッパーはギラギラしてメルセデスだのハマーだのに
乗るんだろう、という素朴な疑問は以前からあったので、とてもスッキリ。オススメ。